パーパス「分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する」宣言の背景とは

Journal
2021.12.28

Institution for a Global Society はパーパス「分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する」を発表しました。12月29日マザーズへの新規上場にあたり、新たにパーパスを掲げた背景や込められた想いについて、代表取締役 福原、取締役 ビジネス開発統括部長 中里、取締役 CFO 西脇の3名が語りました。

目次

・IGSはなぜ「パーパス」を掲げるのか

・IGS創業の原点とは?

・「分断なき社会」ではなく「分断なき“持続可能な”社会」をパーパスに掲げる理由

 

IGSはなぜ「パーパス」を掲げるのか

企業の目的は経済的成長だけなのか

福原:中高時代から学んでいた哲学の影響もあり、「企業がなぜ存在すべきか?」の「なぜ」を徹底的に考えるべきだと思っています。その「なぜ」を突き詰めて表現したものが、企業の存在意義すなわち「パーパス」です。私にとってIGSのパーパスを掲げることは、自然なことでした。

前職は金融系の企業に勤めており、圧倒的な経済的成長が続いていました。これは普通に考えれば喜ばしい状態です。しかし、すべての企業が経済的成長のみを追い求めたら、地球環境も含めた資源が枯渇してしまうと思うようになりました。企業が「経済的成長」だけを追い求めることに意味を感じません。経済的成長を果たしつつ、社会の持続的な発展に寄与していかなくてはなりません。

 

中里:とかくビジネスはWhatとHowが実現できれば成立するからこそ、これからはWhyが重要。特にIGSは教育とHRという、人の人生に大きく影響を及ぼす分野に関わるからこそ、Whyというパーパスを中心に据えてビジネスを展開していきたいと考えています。

 

テクノロジーを扱うなら「倫理観」が必要

福原:では、企業は何のための存在なのか? 私は、経済学者シュンペーターの「企業=革新」という考え方に影響を受け、企業とは「テクノロジーの進化を活用してイノベーションを起こし、社会を前進させる経済主体」だと考えるようになりました。

 

中里:テクノロジーという新しいものが「デバイド(分断)」を生んでしまう、という問題があります。歴史を振り返っても、人を幸せにするためのテクノロジーのはずなのに、残念ながらそのテクノロジーによってさまざまな分断が生まれてきました。地球温暖化はその最たる例の一つでしょう。「何のためのテクノロジーであり、イノベーションなのか」は外せない論点です。これはパーパスそのもので、だからこそ、AIやテクノロジーを活用するIGSも、パーパスを掲げる必要があると考えています。

 

福原:テクノロジーを扱う主体、つまり開発者と活用者には、「倫理観」が必要です。技術活用者である企業も倫理観を持たないと、資源を無限かのように利用しつくしてしまうことがあります。持続「不」可能な社会になってしまうのです。

 

パーパスを発信する重要性

中里:発信という観点でもパーパスについて考えていきたいと思います。パーパスは社内だけで掲げていればよいのでしょうか? 社外に発信していく必要性とは何なのでしょう?

パーパスとは一言でいえば「IGSがどういう社会をつくっていきたいのか」ということ。「社会」という単位は、当然ながらIGSだけで作り上げていくものではありません。目指すべき社会を実現するためには、社員、パートナー、クライアント、株主が、同じ方向を見ていけるようにパーパスという看板をあげていくことが重要です。

 

福原:冒頭に述べたとおり、パーパスは「なぜ」を追求して、行きついた答えを表現したものです。そのため、思想や価値観が反映されたものになります。コミュニティとは同じ思想・価値観を持つ人たちの集合体ですから、パーパスを起点にコミュニティを広げていくという点でも、パーパスの発信価値は大きいと思います。

 

IGS創業の原点とは?

今、ビジョンに収まりきらない事業に成長しつつある

福原:IGSのビジョン「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」は、5年前に現在の「GROW360」や「AiGROW」の原型となる「GROW」をリリースした当時に掲げたもの。お陰様で、私たちはHR事業、教育事業を通して、ビジョンを一部実現し始めたと考えています。さらに、昨年から着手した新規事業の「STARプロジェクト」は、当時のビジョンを超えたものとして形になってきました。

それならビジョンをアップデートすればよいのでは? という声もあると思いますが、先に述べたとおり、「なぜ」を徹底的に考え、倫理観を持ってテクノロジーを活用し、実現したい社会に向けて共に進んでいく企業でありたいと考えています。我々の事業が当初のビジョンを達成し始め、新たなビジョンを構築し得るこのタイミングで、敢えて目指す先をまずパーパスとして掲げたいと思ったのです。

 

人材評価・教育に挑む企業だからこそ、経済的な分断をなくしたい

福原:IGSは、日本の人材評価・教育への問題意識から始まった企業です。今の社会人を形成する日本の人材評価・教育のベースは、戦後の経済至上主義の中で構築されたもの。しかし一定の経済成長を遂げた今、当時と同じ人材評価・教育をしても、人づくり・国づくりに限界があります。そこで私は「答えの無い問いを考える塾」を起業しました。しかし、塾は一定の富裕層にしか届けることができない。より社会全体を前進させていく企業として成長するには、経済格差に手を打っていく必要があると考え、全国の企業と学校へ幅広く提供できる「GROW」を開発しました。今は、学校にいる間だけ学べばいいということはなく、生涯学び続ける必要があります。その意味で、私たちの教育事業も、HR事業も双方とも重要です。

 

中里:「GROW」を設計した当時から最も着手したかったのは、まさにこの不条理な教育格差をどうやったらなくしていけるのかという問題です。当時の会社の規模でまず取り掛かれる問題の一つに、偏差値だけで評価される社会への疑問がありました。その解決の手段として、学力以外の力を計測し伸ばすための、新しい評価軸を学校と企業に提供していきたいと考えました。だからこそ当時、ビジョン「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」を掲げたわけです。

ビジョン達成の道のりが見えてきた今こそ、本丸に向かいたい。教育格差を生む大きな問題は、やはり経済格差です。さまざまな研究により、幼少期の体験が大きな差を生むことがわかっていますが、その差の多くは経済資金の格差により生まれることが、先行研究でも明らかになってきました。グローバルに見ても、一番大きな格差問題は経済格差です。日本だけでなく、グローバルな問題を同時に解消していきたいです。

 

経済的成長をしながら経済格差の解消に挑戦したい

西脇:フランスの経済学者トマ・ピケティの『新・資本論』にあるように、格差が拡大しています。先ほどの話にあったとおり、企業の目的が経済的成長だけになると、資本がごくごく限定的な人に偏り、貧富の格差は拡大するばかりです。ごく一部の人たちが恵まれた環境になり、その他の人が単なる労働者になりさがりかねない。パーパスを掲げるということは、経済的成長以外の存在意義を掲げるということ。ならば、企業として経済的成長を続けながらも、人々の幸せを確保しながら適切な分配を行なうことに、挑戦したい。

 

福原:まさに「r>g」の問題です。過去500年のデータ分析から、資本家へのリターンが経済成長を上回り続けてしまうことがわかっています。資本主義のアップデートが求められる中で、人材評価・教育に挑む企業として、そしてパーパスを掲げる企業として、まずは経済格差の解消に挑戦したいと考えます。

 

 

「分断なき社会」ではなく「分断なき“持続可能な”社会」をパーパスに掲げる理由

パーパスに向けた事業活動とは、システムデザインを加味した事業活動である

中里:企業が経済主体である以上、「分断なき社会」を実現する上で“持続可能”という要素は外せません。分断なき社会を実現する上で、持続可能なシステムをデザインしていくことが重要です。世の中の格差は さまざまな要素が絡み合って起きています。大学院でシステムデザインを研究している身としては、複雑なシステムに対して、一つ介入すると誰にどのような影響や問題が出てくるのか紐解きながら、最大幸福あるいは効用関数を考えながら、ステークホルダーの持続的な幸せの状態を創ることが重要だと考えています。

当然、介入によって起きる問題の予測は非常に難しいものです。そして教育こそ、介入からどのような結果が出るのかすぐにわからない、長期にわたって取り組む必要がある分野です。このような想像力を持って持続可能なシステムをデザインし、事業を展開することに挑戦したいと思います。

 

福原:システムデザインの考え方は非常に重要です。今求められるESG(環境・社会・ガバナンス)の発想とは、企業がまさに生態系というシステムの一部を担っているという意識から始まっています。我々の事業活動がそのシステムへどう影響を及ぼしていくのか、倫理的に考える必要があるのです。ESGとシステム、持続可能性とシステムは、切っても切り離せない関係性です。

繰り返しになりますが、企業が経済的成長のみを追いかけるということは、システムへの影響、生物を含めたさまざまなステークホルダーへの影響を十分に考慮していないということになります。すべての調和の中で、ある意味「分をわきまえて」、人間が活動していくことがベストだと考えています。

 

西脇:システムへの影響を長期的に見た時、後世に引き継ぐという視点は欠かせません。子どもたちやその後の世代にどんなよい社会を残せるのか。教育に関する事業を行なっている以上、自然との共生も含めた持続可能な社会を、世代を超えて手渡していきたいという思いを、このパーパスに込めています。

 

100年掲げられるパーパスを

福原:「分断なき、持続可能な社会の実現」というパーパスを掲げたのは、100年以上かけて取り組むという意思の表明でもあります。まずは経済格差を持続可能な形で解消できる社会の実現に向けて取り組んでいきますが、仮にこれが実現できた時、次の分断が生まれている可能性があります。我々は、何らかの形で起きている分断によって機会の平等が失われているという問題に対して、取り組み続けていきたい。

 

中里:ビジョンはいずれ経済格差の解消に関するメッセージとして落とし込まれていくでしょう。パーパスが100年以上という単位ならば、ビジョンはより直近で取り組んでいくものになります。

 

福原:パーパスが解消される世界が来るならば、極論、IGSはいらないと思っています。企業の存命のために活動をするのではなく、パーパスのために企業活動をしていきたい。将来、「あのパーパスを掲げていたね」と言えたら、それが我々の一番の幸せだと思うのです。